管理人の自律神経失調症 経験談

 初めてのめまい 20代後半のある日、会社で強いめまいが起こり立っていることができなくなりました。ふだんの立ちくらみとは違い、体がふわふわした状態が続き、心臓もドキドキしてきました。幸い、その日は社内で仕事をしていたので、早退させてもらい、タクシーで帰宅しました。
それからというもの、1日中ずっとではないのですが、毎日のようにめまいを感じるようになりました。すぐにおさまるときもあれば、何時間もふわふわした状態が続くこともあり、初めての経験に不安になりました。
 病院へ(内科・婦人科)
内科医は、私の症状を聞いた後、まず座っている状態で血圧を測定し、その後、立つように言われ、再度血圧測定をしました。その結果をみて、起立性低血圧ですね、と言われました。座っている状態では最高血圧が120程度なのに、そのまま立って血圧を測ると最高血圧が90ぐらいになっていました。いきなり30近く下がることにより、めまいのような症状が起こるそうです。
起立性低血圧症(起立性調節障害ともいう)は、立ち上がったときなどに、血圧が急に下がったり、脈拍が増加したりする状態をいうそうです。原因はさまざまですが、私の場合、他の健康状態にまったく問題がなかったこと(低血圧でも貧血でもない)、年齢が若かったことから、不規則な生活やストレスによる可能性が強いと言われました。

当時、コンピューターメーカでSEの仕事をしていた私は、毎日のように朝早くから深夜まで働き、休みである土曜日も休むことは滅多になく、体調が悪くても無理して仕事に行っていました。
そんな生活を何年も続けているうちに体にストレスが蓄積されていたようで、ある日突然、めまいとなって現われました。これが一つ目の症状です。内科では、めまいの薬(血管を引き締める薬と言われました)を処方してもらい、しばらく飲み続けましたが、多少、改善されてはきても完全に治ることはありませんでした。他にも体調が悪くなり、何度も通院するうちに医師に「自律神経失調症」であると言われました。

それでも仕事を休むことはできなかったので、薬をもらいながら無理を続けていたところ、今度は不正出血が起こりました。それまで生理は順調で生理痛も軽かったので、婦人科を訪れた経験はなかったのですが、さすがに不正出血は初めてのことで不安になったこと、一時的なものではなく毎日続いたため、勇気を出して婦人科を受診しました。
問診と内診により、問題のある不正出血ではないことがわかりホッとしましたが、ここでもストレスが原因と考えられると言われました。病気ではないので..と、出血を止める作用のある漢方薬を処方され、「すぐに治るものではないので、しばらく飲み続けてください」と言われました。しばらくの間、少量ではあるけれど不正出血は続き、本当に止まる日が来るのだろうかと不安になりながら、漢方薬を飲み続けました。

婦人科に行くようになって初めて、自分の健康に心から不安を感じ、このままでいいのだろうか?と疑問を感じ始めました。これまでのように休めない..と言ってる限り、病気になるまで働くことになりかねない、そこまで無理して働くことに意味があるのだろうか?と思いました。
 苦しい毎日〜退職 心身共に毎日が辛い状態で、できない、苦しいとは言えなかったこともあり、徐々に精神的に堪えられなくなり、カウンセリングを受けた方がいいのかもしれない、などと悩むようになってきました。その頃は心療内科がまだあまりなく、カウンセリングもどこで受けていいのかわからなかったので、電話帳で調べてはみましたが、結局、行くことはなく、ただ、悩むばかりでした。

このままでは本当に病気になると思い、仕事を辞めることを考え始め、直属の上司に初めて相談しました。その頃、管理職(私の場合は課長)による個人面談がありました。
課長は、私があらかじめ相談した直属の上司に話を聞いていたようで、私が多くを語る前に課長の方から「これまで頑張ってきたことはよく知っている。今回の仕事だけはどうしてもできない、ということでもかまわないんだよ」と。誰でも全てのことができるわけではなく、これまで充分頑張ってきているんだから1つや2つどうしてもできないことがあっても問題はないと言われました。この言葉で、それまで全身にかかっていプレッシャーのようなものがすーっと消えていくような気がしました。
その後もしばらくは同じように仕事をすすめ、いろいろ苦しくもなりましたが、課長の言葉により精神面ではかなり救われる部分がありました。そのこともあって、もう少し頑張ってみようと思いましたが、一度くずれた体調はそう簡単に戻るものではなく、毎日ではなくなってきましたが、その後もずっとめまいは続きました。不正出血はそれから1カ月もする頃におさまりましたが、最初から数えると約3カ月半、毎日続きました。

体調が戻らないこともあり、最終的には会社を辞めることを決断。その会社に勤めながら、規則正しい生活を送るというのは不可能だったためです。退職を申し出てから辞めるまでには、1年以上かかりましたが、なんとか退職できました。
 規則正しい生活〜回復 退職後、規則正しい生活となり、スポーツクラブに通い始めました。そういう生活を半年も続ける頃には、体調が回復し、元気であるということはこういう体調のことだったんだ、と実感しました。薬では治らなかった体調も、強いストレスから開放された規則正しい生活により、早いうちに体調の変化が見られ、無理してでも辞めてよかったと、そのとき初めて思いました。
自分でいうのも変ですが、学生時代から会社に入るまで、多少の挫折はあったにしても大きな挫折もなく、一つのレールから踏み外すことなく前に進んできました。そのため、会社を辞める、ということにとても抵抗を感じており、人に対してはそんなこと思わないのに、自分が駄目な人間に思えてしまうことがあり、辞めてしばらくの間、本当にこれで良かったのかと考えることがありました。

退職して2カ月後には再就職しましたが、前職ほどの負担はなく、体調はよくなりました。ただ、めまいだけは3年ぐらい続いたと思います。その後も、
疲れたらめまいが起こるというように、自分の体調の変化を表わす症状の一つになってしまいました。それからというもの、めまいが起こったときは体が休みたいと私に知らせているのだと思い、極度の無理はしないように心がけました。

今になって振り返ると、その当時の自分は本当にどうかしていたような気がします。一生その仕事を続けなければいけないわけでもないのに、もうそこから逃れることができないような気持になり、人生に希望が持てない、こんなに苦しい毎日を一生を送らなければいけないのだろうか..などと本気で悩んでいたのです。
あのとき、これ以上の無理を続けていたらもっと症状は悪化したと思いますが、めまい、不正出血の形ではっきりとした身体症状が現われたことは運が良かったのだと思います。

それからは、苦しくなるまで無理をしない!と決めました。人がどう思うかも気にしないようにしよう..と。
今でも無理が続いたときは、必ず立ち止まるようにしています。たまには手抜きをしたり、何もせず適当に過ごすことも、決してなまけているのではなく、心身共に健康でいるためには必要なことなんだと思っています。